ラグランジュは第3級シャトーですが、1983年までは1960年代と1970年代の悲惨な品質のせいで評判に大打撃を被っていました。 畑の立地は良く、珍しく分割されていないし、グリュオー・ラローズに隣接しているのだから、良好なワインを生み出せない理由はなかったはずなのですが… 日本の誇る大企業・サントリーに買収されたのは1983年で、同社はシャトーとシェ(ワイン蔵)だけでなく、畑にも並外れた改良を加え始めました。 出費は一切惜しまなかったため、管理を行うマルセス・デュカスや、このシャトーの若くて熱心なエノロジストである鈴田健二といった有能な人々が、びっくりするほどの短期間のうちにすばらしいワインを造るようになりました。 1985年以降のヴィンテージになにか特別なスタイルが見られるとしたら、印象的な風味の深みと密着したたっぷりのタンニン、香ばしい新樽、下地となる多汁性とふくよかさでしょう。 厳しい選別と、シュルマテュリテ(葡萄が過熟すること)の要素を持つ、非常に熟した葡萄を収穫しているおかげであるのは間違いありません。 この新しい当主は20年強も熟成できるのに若いうちから魅力のあるワインを造ろうとしているようであります。