ディケムの偉大さとユニークさにはいくつかの要因があることは間違いない。まず第一に、固有の微気候を伴う完璧な立地条件がある。第二に、リュール・サリュース家は、97km にも及ぶパイプを用いた精巧な排水システムを設置した。第三に、ディケムには、経済的な損失やトラブルを斟酌(しんしやく)せずに、最も良質なワインだけを生産しようという狂信的とも言える執念が存在する。ディケムが、近隣の畑に比べてこれほど優れている最大の理由は、この最後の要因にある。ディケムでは、1本のブドウの木からたったグラス1杯のワインしかつくらないと誇らしげに語られる。多くの場合、ディケムに6週間から8週間滞在し、最低でも4回はブドウ畑をまわる150人もの摘み手のグループによって、ブドウが完璧に成熟するのを待ってひとつひとつ摘まれる。